YOSHINORI AOYAMAとは。青山嘉道が描く、メタルフレームの新しいかたち。
細いメタルフレームなのに、印象は平面的ではない。正面ではすっきりとした線に見えた部分が、少し角度を変えると厚みのある面になり、その間から向こう側の景色がのぞく。
YOSHINORI AOYAMA(ヨシノリ アオヤマ)は、そんな「見る角度で変わる造形」を楽しませてくれるアイウェアです。本記事では、デザイナーの歩みからブランドの考え方、ものづくりの背景、そしてDOWNTOWNで撮影した実際の商品のディテールまで、順を追ってご紹介します。

01 / PROFILE
YOSHINORI AOYAMAとは。ブランド名の由来と、青山嘉道の歩み。
YOSHINORI AOYAMAは、アイウェアデザイナーの青山嘉道(あおやま よしのり)が、2023年10月に自身の名を冠して立ち上げたブランドです。ブランド名は、青山氏の名前をそのままローマ字で表したもの。地名や架空の人物に由来する名称ではありません。1
青山氏は1972年、福井県福井市生まれ。漆器関連の仕事を経て、1999年に家業の青山眼鏡へ入り、鯖江市のデザイン講座SSIDで学びます。2001年からはFACTORY900のデザインを手がけてきました。1
- デザイナー
- 青山嘉道 / Yoshinori Aoyama
- ブランド始動
- 2023年10月
- 基本となる製造背景
- Made in 鯖江
- ブランドコンセプト
- Ambivalence
青山氏の経歴には、2013年のSILMO d’Orサングラス部門、2015年の審査員特別賞などの受賞歴があります。これらは新ブランド発足以前の実績です。「若いブランド」と「経験の浅いデザイナー」は、同じではない。その違いを知ると、デビュー当初からの造形の完成度にも、また別の見方が生まれます。1
02 / A NEW APPROACH
FACTORY900の先に、なぜメタルフレームを選んだのか。
FACTORY900で知られる青山氏が、新しいブランドで向き合ったのは、アセテートだけでは表現しにくい造形でした。本人へのインタビューでは、薄くつくりたい部分や新しい表現を実現するため、従来の素材・製造環境にとどまらず、メタルの領域へ進んだ経緯が語られています。2
大切なのは、単に「太い眼鏡から細い眼鏡へ変わった」と捉えないことです。素材が変われば、残せる厚み、曲げられる線、支えられる形も変わります。アセテートの塊を使って生まれる立体感と、細い金属の線や面を組み合わせて生まれる立体感は、同じ表情にはなりません。
YOSHINORI AOYAMAの写真を見ると、ボリュームを減らしても、造形への関心は失われていないことが分かります。むしろ、何もない部分をどう残すか、一本の線をどこで折り返すかといった、細部の選択が見えやすくなっています。薄さや軽快さを、デザインを省略するためではなく、別の立体をつくるために使っている。そこに、このブランドを読み解く面白さがあります。
03 / AMBIVALENCE
一つの眼鏡に、相反する価値を共存させる。
ブランドの中心にある言葉はAmbivalence。公式では、「創造と破壊」「未来と過去」「調和と不協和」という、相反する価値を持つアイウェアを掲げています。1
BRAND CONCEPT
Ambivalence
創造と破壊未来と過去調和と不協和
少し抽象的な言葉ですが、プロダクトに置き換えると理解しやすくなります。例えば、どこか懐かしい丸いレンズの上に、建築的な直線が通っている。左右をつなぐ細い橋のようなパーツに、予想以上の奥行きがある。見慣れた眼鏡の要素を残しながら、そのつながり方だけを変えることで、親しみやすさと違和感が同時に生まれます。
すべてを未来的にしてしまうのでも、クラシックな形をそのままなぞるのでもない。この「両方がある」状態を意識して眺めると、丸と直線、滑らかさと角、繊細さと力強さが、一つのフレームの中でどう釣り合っているかが見えてきます。これは公式コンセプトを、実際の造形から読み解くための一つの視点です。
04 / TITANIUM CUBISM
Titanium Cubism。線・面・空間から立体を考える。
代表的なシリーズの名称がTitanium Cubism(チタニウム・キュビズム)です。公式では、セザンヌやピカソらに触れながら、複数の視点を一つの画面に取り込む発想を、チタンフレームの表現へつなげています。立体を面へ、面を線へ、さらに空間へと考えていく視点が、その背景にあります。3
「キュビズム」と聞くと、ただ角ばったデザインを想像するかもしれません。しかし、このブランドを見るうえで大切なのは、四角いか丸いかよりも、正面と側面で何が違って見えるかです。
正面から細い線に見える部材にも、横から見れば幅があります。その面に光が当たると、輪郭とは別の明るさが現れます。さらに部材の間に隙間があると、そこだけは背景が抜けて見える。線の太さ、面の向き、空間の形を同時に眺めることで、写真一枚でも読み取れる情報が増えていきます。
掲載したYA-043の接写では、リム上部の幅と厚み、下部へ向かって細く変化する線が見えます。正面写真と見比べることで、同じフレームの中にある線と面の関係を確かめられます。

05 / MAKING
製造背景は鯖江。構想と製造技術を、対話でつなぐ。
ブランドは製造の基本としてMade in 鯖江を掲げています。ただし、それを「すべてのモデルを、同じ自社工場だけで製造している」という意味に読み替えるのは適切ではありません。1
青山氏はインタビューで、メタルフレームでは外部の製造現場と協働し、実現したい形について、加工上の制約や代わりの方法を探りながら進める姿勢を説明しています。工場で培った視点を持ちつつ、従来の設備に発想を限定しないものづくりです。2
例えば、正面から見た線が同じ太さでも、裏側にどれほど厚みを持たせるかで、斜めからの見え方は変わります。細くする場所と、形を支えるために残す場所。その境界が滑らかにつながるかどうかでも、受ける印象は違います。接写写真で注目したいのは、こうした「輪郭以外の設計」です。
また、機械による加工と人の手による仕上げを、単純に対立させる必要もありません。青山氏は同インタビューで、機械をものづくりの道具として捉え、精度と仕上がりを追求する考え方にも触れています。大切なのは手作業の多さを一律に語ることではなく、その形を実現するために、どの方法を選んでいるかという点です。2
06 / PRODUCT STUDY
YA-004。丸いリムに、直線と四角い空間を重ねる。
2026 SSのYA-004は、ラウンドのレンズシェイプと、眉側を走る直線的なブローバーの対比が分かりやすいモデルです。ブローバーとは、フレームの上部をつなぐ横方向の部材のこと。下の正面写真では、丸い輪郭とは別に、左右へ伸びる線が目に入ります。6, 7


目尻の「四角い抜け」を、斜めから見る。
目尻側の接写を見ると、黒い部材が四角い空間を囲み、その内側にゴールドのリムが位置していることが分かります。輪郭をただ二重にするのではなく、前後の位置をずらすことで、正面では重なって見える部分に奥行きが生まれています。
ここで一度、黒い部分だけを目で追い、次にゴールドの部分だけを追ってみてください。それぞれは別の形をしていますが、重なると一つの眼鏡としてまとまっています。上の直線、レンズの円、目尻の四角。それぞれ異なる形が、どこで接近し、どこに余白を残すかが、このモデルの見どころです。
black matte / goldは、色と質感の対比も魅力。
col.03は、マットブラックとゴールドの組み合わせ。写真では、黒い上部が輪郭を落ち着かせる一方、ゴールドのリムには明るい反射が現れています。同じ細さの線であっても、色と表面の仕上がりによって、目に入る順序が変わる。その違いを、配色のアクセントだけでなく、構造の見せ方として楽しめます。6, 7
07 / CLIP-ON
YA-004+CLIP。色だけでなく、眼鏡の表情を切り替える。
DOWNTOWNでご紹介しているYA-004+CLIPには、専用のクリップオンサングラスが付属します。このクリップは、熟練職人が一つずつ手作業で製作する受注生産品。こちらの商品では偏光レンズを採用しています。7


装着前後を見比べると、単に透明なレンズが濃色へ変わるだけではありません。元の丸いリムに対して、クリップ側は上部の輪郭が異なり、フロントの見え方そのものが変化しています。眉側の黒いラインを残しながら、その下にもう一つの表情が加わる構成です。
ブリッジ付近の接写では、眼鏡本体とクリップの細い部材が、前後に重なっている様子も確認できます。近くで見ると複雑ですが、少し離れると一つのフロントとしてまとまる。その距離による印象の変化も、この組み合わせを楽しむポイントです。
クリップを選ぶときは、機能だけでなく、装着した状態の輪郭や横顔も合わせて見ていただくのがおすすめです。なお、ここで述べた受注生産・手作業の説明はこの商品のクリップに関するもので、ブランドの全フレームが同じ製造方式という意味ではありません。製作・取り寄せの状況は、その都度お問い合わせください。
08 / PRODUCT STUDY
YA-043。八角形とハイブリッジを、端正に組み合わせる。
YA-043は、同じ2026 SSのコレクションでも、YA-004とは異なる表情を見せます。レンズシェイプはオクタゴン=八角形。鼻の上、高い位置をつなぐハイブリッジが、横方向の線を印象づけています。8, 9


接写では、リムが全周で均一な厚みではないことが分かります。上部には面として認識できる幅があり、下部へ向かうと細い線へと表情が変わる。正面写真のすっきりした印象と、斜めから見たときの存在感に差が生まれる部分です。
このモデルでは、厚みのあるチタン材にプレスと切削を重ねたリムを採用しています。col.02 silverは、上部からテンプルにかけての光沢と、下側の落ち着いたマットな仕上げを組み合わせたカラーです。9
黒と金のような色差がなくても、反射の違いによって部材の役割は見えてきます。写真の上部を目で追ってから、下側のレンズリムへ視線を移すと、同じシルバーの中に強弱があることが分かります。形だけでなく、光り方を選ぶという視点で見ていただきたい一本です。
09 / DOWNTOWN BESPOKE
YA-001A。デビュー作につながる造形を、マットブラックで。
DOWNTOWN別注のYA-001A col.D01は、ブランドのデビュー作YA-001をベースにしたモデルです。別注カラーはオールマットブラック。レンズを囲むリムと、そこから離れて走る線の間に空間をつくり、多層的な見え方を生み出しています。10, 11


色数を絞ると、配色の対比よりも、形と陰影の違いに意識が向きます。正面では一本の横線に見える部分も、鼻側の接写では、段差を持ちながら別の線へとつながっている。線と線の間には背景が見え、その空間が部材の輪郭を浮かび上がらせています。
YA-004のブラックとゴールドが、部材を色で分けて見せる組み合わせだとすれば、この別注は、一つの色でどこまで構造を感じさせられるかを楽しむ一本。同じブランドを選ぶ場合でも、色の違いによって、造形の受け取り方が変わる好例です。
サイズは43□25-145。公式の標準YA-001に記載されている42□23-145とは異なるため、検討時には、別注モデルの商品ページの数値をご確認ください。10, 11
10 / ANOTHER EXPRESSION
チタンだけではない。Archaeology Goldという別の表現。
ブランドにはArchaeology Goldというシリーズもあります。公式では18金・18金ホワイトゴールドを用い、有機的な形や金の輝き、時間を感じさせる表現を提示しています。12
ここで確認しておきたいのは、YOSHINORI AOYAMAを「チタンフレームだけのブランド」と限定しないことです。同じデザイナーの中にも、構造や空間へ向かう視点と、素材そのものの表情へ向かう視点があります。なお、このシリーズの紹介はブランド理解のためのもので、DOWNTOWNでの現在の在庫や取り扱いを示すものではありません。
11 / HOW TO LOOK
選ぶときは、正面・斜め・横顔の三つを。
YOSHINORI AOYAMAを選ぶ際には、レンズの形だけで決めず、少し角度を変えながら見比べてみてください。正面は全体の輪郭、斜めからは部材の重なり、横顔はリムの厚みやテンプルへのつながり。それぞれ違う情報が見えてきます。
写真で比較する場合も、まずは正面写真で好きな輪郭を探し、次に接写で「どこに厚みがあるか」「どこが抜けているか」を確かめると、モデルの違いを捉えやすくなります。黒と金のコントラスト、シルバーの光沢差、マットブラックの陰影など、仕上げにも目を向けてみてください。
本記事の写真では、眼鏡とサングラス、クリップ装着時をそれぞれ紹介しています。レンズの色が違うと見え方も変わるため、フレームの形とレンズ仕様は分けて確認するのがポイントです。サイズや掛かり具合、レンズの組み合わせについては、商品ページの情報と店頭でのご相談を合わせてご活用ください。
一見するとシンプルなのに、見直すたびに別の線が見えてくる。YOSHINORI AOYAMAの魅力は、目立つ装飾だけで語れるものではありません。一本の線をどこに置くか、面をどちらへ向けるか、どこに何もない部分を残すか。その選択の積み重ねを、ご自身の目で確かめながら楽しんでいただきたいブランドです。
参考資料・写真クレジット
ブランドの沿革・仕様は公式資料を優先し、製造背景は本人へのインタビュー、個別商品の説明はDOWNTOWN商品ページを参照しています。空間・陰影・見え方についての記述には、掲載写真に基づく当店の解説を含みます。
- YOSHINORI AOYAMA|CONCEPT・デザイナープロフィール
- blinc|デザイナー青山嘉道氏インタビュー・前編(2024年1月14日)
- YOSHINORI AOYAMA|Titanium Cubism 2023 AW
- YOSHINORI AOYAMA|LOOKBOOK 2026 SS
- YOSHINORI AOYAMA|LOOKBOOK 2023–24 Wearing
- YOSHINORI AOYAMA|YA-004 公式仕様
- DOWNTOWN|YA-004+CLIP col.03 black matte / gold
- YOSHINORI AOYAMA|YA-043 公式仕様
- DOWNTOWN|YA-043 col.02 silver
- DOWNTOWN|YA-001A col.D01(DOWNTOWN別注)
- YOSHINORI AOYAMA|YA-001 公式仕様
- YOSHINORI AOYAMA|Archaeology Gold
掲載写真:DOWNTOWN(商品・ディテール写真)。掲載情報の確認日:2026年9月19日。価格・在庫数は本文に固定していません。