tarianとは|デザイナー、設立の背景、色と素材のデザインを徹底解説
tarian(タリアン)は、2011年にジェレミー・タリアンがパリで設立したアイウェアブランドです。特徴は、複数の色や透明感の異なるアセテートを組み合わせたデザイン。陶芸やドローイングにも取り組むデザイナーが、素材の表情と日常の掛け心地を丁寧に考えています。
父は、眼鏡デザイナーのアラン・ミクリ。ジェレミー自身もic! berlinで経験を積み、独立後はフレームの造形や色使いで評価を受けてきました。この記事では、設立の背景からデザインの考え方、代表的なテーマ、製造や機能まで詳しくご紹介します。DOWNTOWNが運営するTOKYO MEGANE JUNKの本人インタビューも、あわせてご覧ください。


01設立年とデザイナー、ブランドの歩み
ジェレミー・タリアンとは
ブランドを率いるのは、Jérémy Miklitarian(ジェレミー・ミクリタリアン)。日本ではジェレミー・タリアンの名前で知られています。パリを拠点に、眼鏡のデザインと陶芸の制作を続けている人物です。

父のAlain Mikli(アラン・ミクリ)も眼鏡デザイナーで、本名はAlain Miklitarianです。眼鏡づくりを身近に見て育ったジェレミーですが、その経歴には金融の勉強や、ベルリンでのインターンシップも含まれています。
フランスの眼鏡教育機関ISOによる人物紹介では、当初は金融を学び、ic! berlinの経理部門でインターンを経験。その後、デザイン部門でのインターンを経て、同ブランドのコレクションを手がけたと説明されています。さらにニューヨークのParsons School of Designでデザインを学び、自分のブランドへと進みました。
ジェレミーは8歳から眼鏡を掛けています。公式プロフィールでは、眼鏡の重さや鼻への収まり、顔に与える印象を日々体感してきたことが、制作の根底にあると紹介されています。掛ける人の立場から考える姿勢は、後ほど触れる鼻まわりやヒンジの設計にもつながっています。
出典:TARIAN公式 ブランド紹介/ISOによるジェレミーの経歴紹介/Interview Magazine(2011年)
2011年に独立。受賞作から分かる表現の幅
tarianの設立年は、公式プロフィールが示す2011年。ブランド名にはデザイナー自身の名前が使われています。活動の中心はパリにあり、アセテートの眼鏡からメタルを使ったサングラスまで、素材や構造の異なる作品を発表してきました。
キャリアを振り返るうえで欠かせないのが、パリの眼鏡展示会SILMOに関連するデザイン賞です。独立前の受賞と、tarianとしての実績を分けて見ると、その歩みが分かりやすくなります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2008 | ic! berlinで手がけたURBANがSilmo d’Orを受賞。 |
| 2011 | パリで自身のブランドtarianを設立。 |
| 2012 | SAINTONGEがSilmo d’Orのサングラス部門を受賞。 |
| 2019 | GRAPHIC G03がSilmo d’Orのデザイナー部門・眼鏡フレームで受賞。 |
| 2020 | SKY BARがSILMOのPremière Classe賞を受賞。 |
2020年のPremière Classe賞は、ファッションアクセサリーとしての眼鏡に着目した賞です。サングラス、眼鏡フレーム、ファッションという異なる観点で評価されていることに、tarianの表現の幅が表れています。
出典:20/20 Magazine(2008年の受賞・初期コレクション)/TARIAN公式 受賞歴/Optometry Today(2020年の部門と受賞作)
02TOKYO MEGANE JUNK
特別インタビュー
DOWNTOWNが運営するYouTubeチャンネル「TOKYO MEGANE JUNK」では、来日中のジェレミー・タリアンを招いて、直接お話を伺いました。2025年3月29日に公開した特別インタビューです。
デザイナーになるまでの経緯、陶芸と眼鏡の関係、デザインで大切にしていること、今後の展望。本人の言葉と表情に触れると、製品写真だけでは分からない作り手の考え方が伝わります。
動画:TOKYO MEGANE JUNK/2025年3月29日公開。YouTubeで見る
気になるテーマから見る
動画内・概要欄の取扱商品やキャンペーンの案内は、公開当時の内容です。
03デザインコンセプトと着想源
色と素材を考えることから始める
tarianの眼鏡を理解する鍵は、色を素材の一部として考えていることです。ジェレミーは公式サイトで、素材と配色を出発点にデザインを進めると説明しています。色の明るさだけでなく、透け方、模様、厚みも一緒に考えています。
同じブルーでも、透明な板材と乳白色を帯びた板材では、光の通り方が異なります。さらに、べっ甲柄のように濃淡がある素材を合わせれば、単色同士にはない細かな変化が生まれます。tarianの配色は、こうした色と質感の違いを組み合わせたものです。
公式の制作工程では、紙に描いた形を、陰影や色を加えながら発展させ、イタリア・ヴァレーゼ地方のメーカーとアセテートの板材に仕上げる流れを紹介しています。図案と完成した素材を見比べると、色の粒やにじみまで検討していることが分かります。
完成した素材では、図案とすべての色斑が同じ位置に並ぶわけではありません。顔料や層の組み合わせによる変化も、素材の個性として生かしています。フレームを削り出す前の段階から、ブランド独自の表情をつくっているのです。
出典:TARIAN公式 ブランド紹介/公式「Du Dessin à la Matière」
陶芸が教えてくれる、色・凹凸・量感
ジェレミーの活動には、花器やオブジェ、壁に飾る陶芸作品もあります。眼鏡と陶芸に共通するのは、素材を触り、組み合わせ、立体にすること。陶芸では土そのものを混ぜることで、模様を生地の厚みの中につくり出しています。

代表的なシリーズCIELO(シエロ)は、陶製の立体を組み込んだ壁面作品です。円や曲線を使った形、背景との配色、表面の凹凸によって印象をつくっています。眼鏡のフロントも、顔の前に置かれる小さな立体。同じ作り手が形と色に取り組む様子を、別の作品から見ることができます。

ただし、陶芸作品に見られる形を、そのまま眼鏡にしているわけではありません。公式の説明でも、陶芸と眼鏡はそれぞれ独立した制作でありながら、互いに影響を与えるとしています。自由な素材の実験と、顔に掛けるための緻密な設計。その両方を続けていることが、tarianの特徴です。
出典:TARIAN公式 陶芸作品/公式 CIELO/TOKYO MEGANE JUNK「陶芸と眼鏡デザイン」
パリの街、旅先の風景、身のまわりのデザイン
ジェレミーは、パリの街や旅、美術館、自然などから着想を得ています。アトリエがあるのは、ヴォージュ広場にほど近いマレ地区。歴史的建築Hôtel de Melunの中に、眼鏡と陶芸の制作空間を構えています。

PONT DE L’ALMA、PONT SAINT-MICHELなど、パリの橋や場所の名前を使うモデルもあります。身近な街との関係が、モデル名にも表れているのです。一方で、すべてのモデルの形を特定の建物や風景に結びつけることはできません。名前の由来と造形の着想は、分けて見ると理解しやすくなります。
出典:TARIAN公式 アトリエ/ISOによる着想源・モデル名の紹介
04写真で見る色・形・素材の特徴
ここからは、公式商品写真を使ってデザインを見ていきます。色の切り替え、アセテートの厚み、メタルとの組み合わせ。それぞれの工夫が、掛けたときの表情を変えています。
PATCHWORK|2色の切り替えで、眉まわりに表情をつくる
tarianで親しまれてきたテーマの一つが、PATCHWORK(パッチワーク)です。異なる色をつなぎ合わせ、フレームの一部分にアクセントを置きます。全面を鮮やかな色にする場合とは、色の見える面積や場所が変わります。

写真のPOPINCOURTでは、落ち着いたべっ甲柄を基調に、フロント上部へグリーンを配置。目尻側が少し持ち上がった輪郭に沿って色が見えるため、眉まわりがすっきりと際立ちます。正面は柄の深みを残し、上部やテンプルで色を楽しめる構成です。
色だけを取り出せば鮮やかでも、フレーム全体では落ち着いて見える。その理由は、色を使う位置と面積を絞っていることにあります。tarianの色使いを知るうえで、分かりやすい例です。
出典:TARIAN公式 POPINCOURT/DOWNTOWN旧ストアのtarian紹介(PATCHWORKの呼称)。写真の形・色の説明は掲載画像の観察によります。
COLLAGE|3色と透明感で、フレームに奥行きを出す
COLLAGE(コラージュ)は、複数のアセテートを組み合わせる考え方を、さらに発展させたテーマです。現行のLA SIGNATUREでも、3色の構成や、寄せ木細工のような素材の組み合わせが紹介されています。

写真のJACOBは、横方向の広がりがあるフロントに、グレー、イエロー、ブルーを配置した一本。上部の黄色い部分と外側の青い部分が、眉の流れに沿うように見えます。フレーム下側の透明感もあり、色数が増えても輪郭が重く見えにくい構成です。

斜めからの写真では、色の違いがフロントの厚みの中にも見えます。正面の配色に加えて、側面からの見え方を設計している点に注目です。無地のフレームでは見落としやすい厚みが、色の境目によって分かりやすくなっています。
出典:TARIAN公式 JACOB/公式 LA SIGNATURE。COLLAGEと色・質感の関係については、Platform Eyewear(2025年、ジェレミーへのインタビュー)も参照。
チタンとアセテート|細い線と、色のある立体を合わせる
tarianの表現は、アセテートだけに限りません。LE TITANEでは、チタンの細い線と、アセテートの色や厚みを組み合わせています。素材ごとの見え方を使い分けることで、正面と横顔に違う印象を持たせます。

写真のJUSSIEUは、レンズの外側に厚みのあるグリーンのパーツを置き、中央のブリッジやテンプルを細く仕上げています。アセテートが目元の輪郭をつくり、メタルがフレーム全体をつなぐ。それぞれの役割が見て取れます。
ここでも、イエローはテンプルの先など限られた部分に使われています。正面の色を増やしすぎず、横から見たときや眼鏡を外したときに、別の色が現れるデザインです。
出典:TARIAN公式 JUSSIEU/公式 LE TITANE
SKY BAR|上部の一本の線が、全体の印象を決める
より実験的な造形を知るなら、SKY BARも外せません。2020年のPremière Classe賞を受賞したモデルで、建築や構造を思わせる線の使い方が特徴です。

現行のSKY BAR HORIZONを見ると、レンズ上部から離れた位置を通るゴールドのバーが目に入ります。直線を少しずつ折りながら左右へ伸ばすことで、眉の上にもう一つの輪郭をつくっています。
JACOBが色を組み合わせて厚みを見せるのに対し、こちらはパーツの間に空間を残すことで構造を見せています。同じブランドの中に、色の豊かさと線の明快さがある。tarianを鮮やかなアセテートだけで捉えないためにも、知っておきたいデザインです。
出典:TARIAN公式 SKY BAR HORIZON/Optometry Today(受賞作の着想)。写真は現行掲載品で、2020年の受賞個体そのものではありません。
05現在の5つのコレクション
2026年9月時点の公式サイトでは、主なコレクションを次の5つに分けています。PATCHWORKやCOLLAGEといったデザイン上のテーマと、現在の商品分類を整理しておくと、ブランド全体を見渡しやすくなります。
| 名称 | デザインの方向性 |
|---|---|
| LA SIGNATURE | アセテートの厚み、はっきりした輪郭、複数の色を組み合わせた造形。JACOBなどを展開。 |
| LE VESTIAIRE | 日常に取り入れやすいアセテートの眼鏡。顔に収まる形や軽やかさを重視。POPINCOURTもここに含まれます。 |
| LE TITANE | チタンの細さや軽さ、アセテートとの組み合わせを追求。JUSSIEUなどを展開。 |
| LA CROISIÈRE | アセテートの透明感や磨き、光の透け方を楽しむサングラス。LIPARI SUNなどを展開。 |
| LE STUDIO | 自由な形や独特のボリュームを探る実験的なデザイン。SPACE、SKY BAR HORIZON、COMME PAPAなど。 |
共通するのは、素材をよく見せることと、顔に掛けたときのバランス。日常的な眼鏡にも大胆なサングラスにも、その考え方が通っています。
06製造背景と掛け心地への工夫
パリでデザインし、イタリアの職人がつくる
現在の公式サイトは、パリでデザインし、イタリアで職人が製造する体制を案内しています。フレームの製造地域としてヴェネト地方、オリジナルのアセテートを開発する地域としてヴァレーゼ地方が紹介されています。

ブランドは、使用するアセテートのうち半数近くを独自に開発していると説明しています。既存の色から選ぶだけでなく、図案や色の組み合わせから素材を考える。その工程が、tarian特有の色や奥行きを支えています。
なお、初期のコレクションはフランス製として紹介されていました。ブランドの発祥地と、現在のフレーム製造国は分けて理解しておくと正確です。過去のモデルについては、当時の仕様や個々の製品の表記を確認する必要があります。
出典:TARIAN公式 アトリエ・素材/公式 素材開発の工程/公式 現行製品の製造地域/20/20 Magazine(2011年のフランス製コレクション)
鼻への収まりと、ヒンジのしなやかさ
見た目と同じように重視しているのが、鼻への収まりとフレーム全体の重さのバランスです。鼻に接する位置、開き、パッド部分の厚みや高さを検討し、長時間使うことを前提に設計しています。子どもの頃から眼鏡を使ってきたジェレミーらしい関心です。
現在の公式サイトが紹介するヒンジが、AXIS(アクシス)。ネジを使わないフレックス構造で、顔の幅や動きに合わせてしなる仕組みです。公式では洋白のボール部品や安定性を高める構造を説明し、3万回の動作テストを行ったとしています。
色や形に目を引かれるブランドですが、こうした接合部や鼻まわりまで考えている点も、tarianを知るうえで大切です。なお、AXISの説明は現行の公式技術紹介に基づき、歴代のすべてのモデルが同じヒンジを採用しているという意味ではありません。
出典:TARIAN公式 AXIS/公式 鼻まわりと掛け心地の設計
500本のナンバリングを伴う少量生産
tarianは、500本のナンバリング付きエディションを基本として案内しています。現行製品の説明では、フレームの内側にそれぞれの番号を刻むと明記されています。TOKYO MEGANE JUNKのインタビューでも、ジェレミー自身が500本の限定生産と番号について触れています。
素材から配色を考え、形を決め、顔に収まるように設計する。小さなシリーズごとに新しい表現を探ることが、tarianのものづくりです。眼鏡を選ぶときに色や造形を楽しみたい人にとって、細部まで見てみたくなるブランドではないでしょうか。
出典:TARIAN公式 JACOB・限定生産の説明/TOKYO MEGANE JUNK(8:35付近)
参考資料・画像について
- 人物・設立:TARIAN公式ブランド紹介、ISO、Interview Magazine、20/20 Magazine。
- 受賞:TARIAN公式アトリエの受賞歴、Optometry Todayの2020年受賞報道。Première Classe賞は部門名を分けて記載しています。
- デザイン・製造:各節にリンクしたTARIAN公式コレクション、製品、陶芸、素材開発、AXISのページ。
- 動画:TOKYO MEGANE JUNKのデザイナー特別インタビュー(2025年3月29日公開)。
調査日:2026年9月6日。写真はTARIAN公式サイトの掲載画像を使用し、各写真に出典を付記しています。掲載モデルはデザインを解説するための例で、DOWNTOWNの現在の在庫を示すものではありません。

