SAUVAGEとは|設立の背景、デザイナーと7つのモデルから知る独自のデザイン
SAUVAGE(サバージュ)は、2019年に設立されたアイウェアブランドです。パリと東京でデザインを考え、日本で製作するスタイルを掲げています。厚みのあるアセテートの造形、輪郭を際立たせるカッティング、細い金属で描く大胆なラインが特徴です。
創業者は、NATIVE SONSなどを手がけてきたタミー・オガラ。2023年には紗羅マリーがクリエイティブ・ディレクターに就任しました。フレンチヴィンテージを思わせるフレームから、菓子や歴史上の人物に着想を得たコレクションまで、表現の幅を広げています。
SAUVAGEの魅力は、輪郭の強さと細部のつくりを一緒に見ると、よりはっきり伝わります。ブランドの背景をたどりながら、7つのモデルを通して、そのデザインを詳しく見ていきます。
出典:DOWNTOWN/SAUVAGEブランド紹介、SAUVAGE公式/BRAND INFO、WWDJAPAN

01 / PEOPLE & HISTORY紗羅マリーとタミー・オガラ
現在のクリエイティブを担う、紗羅マリー
紗羅マリーは、モデルや俳優として活動しながら、ファッションブランドIROJIKAKE(イロジカケ)のデザイナーも務めています。IROJIKAKEは2015年にスタート。服づくりに携わってきた経験を持つ彼女が、2023年にSAUVAGEのクリエイティブ・ディレクターへ就任しました。

その新しい体制で発表されたのが、2024年春夏のCOUTUREコレクションです。2024年3月には東京でローンチイベントが開かれました。現在のSAUVAGEを知るうえでは、創業者の経歴に加え、この時期からの展開が大切です。
後半で紹介するBOMBARDIERの大きく傾いたレンズ形や、CITRONの横長の輪郭を見ると、目元にどんな表情をつくるかがデザインの大きな要素になっていることが分かります。太さやサイズの違いだけでなく、眉に沿う上辺や目尻の角度によって、掛けたときの印象を変えています。
出典:WWDJAPAN/紗羅マリーのインタビュー・ブランド年表、TRUNK(HOTEL)/2024年春夏ローンチ案内
ブランドを立ち上げた、タミー・オガラ
タミー・オガラは、長年日本を拠点に活動してきたアイウェアデザイナーです。DITAのクリエイティブ・ディレクターなどを務めた後、2013年にThe Light Co. Ltd.を設立。NATIVE SONSをはじめ、複数のアイウェアブランドを展開してきました。

SAUVAGEは、その経験を背景に2019年に誕生しました。初期からフランスと日本の文化を着想源とし、ボリュームのあるアセテートと、精密な金属のデザインを両方扱っています。紗羅マリーはタミーの娘でもあり、現在は彼女がクリエイティブ・ディレクションを担っています。
タミーの仕事では、図案と製造工程が近い距離にあります。手描きの線をもとにフレームの形や角度を決め、その形を削るための工具や工程まで考える。外観のアイデアを、実際に加工できる形へ細かく詰めていく仕事です。SAUVAGEのカッティングや金属部品にも、この製造を踏まえた設計の姿勢が見られます。
出典:NATIVE SONS公式/The Light Co. Ltd.とタミー・オガラ、Gear Patrol/タミー・オガラの工房取材、WWDJAPAN
02 / CONCEPTブランド名とデザインコンセプト
SAUVAGEは、フランス語で「野生の」を意味する言葉です。ブランドが大切にしているのは、整った外観のなかにも強い輪郭や意外性を持たせること。エッジ、彫り込まれた造形、独自の外観が、コレクションの核にあります。
デザインの背景には、美術、工芸、ファッションなどを通じたフランスと日本の文化交流があります。パリと東京でデザインを考え、日本の職人が製作する。その組み合わせを示す言葉が、「DESIGNED IN PARIS & TOKYO」です。
この考え方は、製品を見ると具体的になります。アセテートでは、レンズの周囲を太くしながら、角を斜めに落として面をつくる。メタルでは、細い線を使いながら、レンズの傾きや上部のバーで大きな動きを出す。素材が変わっても、顔に掛けたときの輪郭に個性を持たせています。
また、すべてのモデルを同じ形や太さにそろえてはいません。丸みの強いMIKADOと、横に広がるBOMBARDIER、すっきりしたPHAEDOでは、表情が大きく異なります。一つの定型に固定せず、輪郭と細部を丁寧につくることで、ブランドとしての共通性を保っています。
出典:SAUVAGE公式/BRAND INFO、公式コレクション
03 / MATERIAL & CRAFT素材と、日本でのものづくり
色柄まで含めて考える、アセテート
アセテートは、眼鏡のフレームに広く使われる樹脂素材です。SAUVAGEはタキロンのカスタムアセテートを使い、日本で製作しています。フレームの形だけでなく、生地の色柄や、削った面にどんな模様が現れるかも、デザインをつくる要素です。
黒いフレームでは、表面に映る光から厚みや面の角度を読み取れます。一方、透け感のある色柄では、濃淡や内側の構造も見えてきます。同じ輪郭であっても、素材の見え方が変われば印象は大きく変わります。後ほど紹介するMIKADOの色違いは、その違いがよく分かる例です。
金属部品を、外観の一部としてつくる
メタルのデザインにはチタンを使い、アセテートのフレームにもオリジナルのチタン部品を組み合わせています。金属の線や装飾は、補助的な部品として隠すだけでなく、表に見せるデザインとして扱われています。
たとえば、ブリッジから耳に掛けるつる(テンプル)まで、同じ太さの棒でつなぐわけではありません。太い部分と細い部分を切り替え、表面には色や光沢の違いをつける。小さな金属パーツにも、フレーム全体と呼応する形が見られます。
設計を、福井の製造技術で形にする
製造を支えるThe Light Co. Ltd.は、福井・鯖江の職人や技術者によるものづくりを基盤としています。専用の素材や工具を使い、スケッチから製品までを仕上げる体制です。人の手と工作機械を使い分け、細かな形や仕上げを追い込んでいきます。
SAUVAGEを見るときには、厚いか薄いかだけでなく、面の境目や金属との接点にも注目したいところです。正面では目立たない部分が、斜めから見るとくっきり現れます。
出典:SAUVAGE公式/素材・製造、NATIVE SONS公式/The Light Co. Ltd.、Gear Patrol/製造工程の取材
04 / ACETATE DESIGN厚みとカッティングで、輪郭をつくる
REPUBLIQUE|四角い輪郭に、丸みと奥行きを持たせる
REPUBLIQUEは、SAUVAGEの厚みのあるデザインを理解しやすいモデルです。レンズは四角を基調としながら、下辺と角に丸みをつけています。上部をしっかりと太く取ったフロントは、眉の周辺をはっきりと縁取ります。

正面で目に入るのは、左右の外側に配された3点の小さな金属装飾です。面積のある黒いフロントに、明るい点が加わることで、外側の角が強調されています。大きなロゴを使わず、小さな部品で表情をつくっています。


斜めから見ると、レンズの周囲に厚みがあり、フロントからテンプルへつながる面にも角度がついています。さらに内側を見ると、鼻まわりの立体的なつくりや、テンプルを開閉するヒンジが現れます。正面の太い輪郭と、横から見た面の変化が、このモデルを特徴づけています。
MIKADO|丸いレンズと、角のあるフロント
MIKADOは、丸みのあるレンズ形を持つモデルです。上辺をやや平らにし、外側の角を少し張り出させています。レンズの丸さに対してフレーム外周には角があり、その違いが目元にメリハリをつけます。

REPUBLIQUEよりもレンズの丸みが強く、左右をつなぐ中央部分も小さくまとまっています。レンズとフレームをすべて丸くそろえるのではなく、丸い内側と、角を持たせた外側を組み合わせているのが見どころです。


色違いのLavender SasaとEmerald Sasaでは、濃い色を基調に、紫や緑の模様が見えます。鮮やかな一色で輪郭を塗り分ける配色とは異なり、濃淡が生地のなかに入っています。丸い下辺やブリッジ付近をよく見ると、同じ形でも色の現れ方が違うことが分かります。
黒では輪郭と光沢が主役になり、色柄のある生地ではそこに奥行きが加わる。形と色の両方からフレームを設計するというSAUVAGEの特徴が、よく表れているモデルです。
05 / METAL DESIGN金属の線でつくる、もう一つの個性
STRATOSPHERE|横長のトップバーと、色の入った金属面
SAUVAGEは、立ち上げ時からアセテートだけでなく、コンビネーションとチタンのフレームも展開してきました。STRATOSPHEREを見ると、メタルにもブランドらしい強い輪郭があることが分かります。

レンズの上に横長のバーを置いた、ツーブリッジのサングラスです。レンズ上部はほぼ水平で、下部は角を丸めた四角い形。鼻側へ向かって少し傾く線が、中央のブリッジを際立たせています。

ゴールドカラーの明るい金属面に、濃い色の部分を組み合わせている点も特徴です。テンプルはフロントに近い部分に厚みがあり、途中から細い線へ変わります。金属の太さを切り替え、色の境目をつくることで、薄いフレームにも立体感を持たせています。
BOMBARDIER|斜めに広がるレンズと、直線の組み合わせ
BOMBARDIERは、紗羅マリーによる2024年春夏COUTUREコレクションのモデルです。同じツーブリッジでも、STRATOSPHEREとは輪郭が大きく異なります。左右のレンズが外側へ広がり、上辺と下辺にもはっきりした傾きがあります。

上部の細いバーはほぼ水平ですが、その下のレンズは斜めに動いて見えます。直線的なトップバーと、傾きのある左右の輪郭を組み合わせた構成です。線を太くすることに頼らず、角度の違いで目元に強さを出しています。

着用写真では、レンズが眉の周辺に沿いながら、目尻側まで広がっていることが分かります。フレーム単体で見ると大胆な形ですが、顔に掛けると左右のラインが一続きの表情になります。SAUVAGEのメタルを知るうえで、単体写真とLOOKを合わせて見たいモデルです。
出典:SAUVAGE公式/BOMBARDIER、2024年春夏COUTUREの発表
06 / COLLECTION THEMES菓子や人物から広がる、コレクションのテーマ
CITRON|フランスの菓子から生まれた、横長の輪郭
紗羅マリーがディレクターを務めるSAUVAGEでは、フランスの菓子から着想を得たコレクションも発表されています。その一つがCITRONです。公式コレクションには、MACARONやÉCLAIRといった名前も並んでいます。

CITRONは、縦幅を抑えた横長のオーバルを基調に、目尻側へ少し角度をつけたフレームです。上辺は中央から外側へなだらかに持ち上がり、下辺は大きく丸く回り込みます。角の強いキャットアイとは異なり、丸さを残した目元になります。
MIKADOと比べると、レンズの縦横の比率が違います。MIKADOは丸い形が目を囲みますが、CITRONは横方向を強調します。どちらも丸みのあるフレームでありながら、顔に現れる線の向きが変わります。
出典:UOMO/CITRONとコレクションの着想、SAUVAGE公式/CITRON
LADY JANE|「その人に似合う眼鏡」から形を考える
2026年春夏のLADY JANEは、レディ・ジェーン・グレイに似合う眼鏡をつくる、という発想から生まれました。人物像を出発点にして、ブリッジの細さや、フレームの横側に持たせるボリュームを決めています。

形は、スクエアとキャットアイの中間です。左右をつなぐブリッジは細く、目尻側には厚みがあります。外側が少し持ち上がることで、穏やかな四角い輪郭に変化をつけています。強くつり上げすぎず、横方向の広がりを残しているのが特徴です。

Light Grey Crystalの斜めからの写真では、フロントの厚さに加え、テンプル内部の装飾も見えます。前面の小さな金属飾りと、透明感のある生地の内側に見える模様。離れて見る輪郭と、近くで見る細部の両方に、デザインが施されています。
出典:SAUVAGE公式/LADY JANEのコンセプト・製品写真
PHAEDO|哲学者を想像してつくられた、簡潔なスクエア
同じ2026年春夏のPHAEDOは、ジェーン・グレイが愛読した、ソクラテスの死を扱う書物に着想を得たモデルです。ソクラテス自身が掛ける眼鏡を想像し、できるだけ簡潔な形を目指しています。

スクエアを基調としたフロントは、上辺と下辺を緩やかにつないでいます。LADY JANEのように目尻へ視線を引き上げる形に対し、PHAEDOではレンズを囲む線が落ち着いて見えます。装飾を小さくまとめ、フレーム越しに見える目を引き立てるという狙いです。
SAUVAGEでは、コレクションのテーマが具体的な造形に反映されています。想像する人物に合わせて、縁の太さ、角のつけ方、ブリッジの形を考える。その結果として、一つのコレクションのなかにも違った表情のフレームが生まれています。
出典:SAUVAGE公式/PHAEDOのコンセプト、LADY JANE
07 / THE SAUVAGE IDENTITYSAUVAGEらしさは、どこにあるのか
SAUVAGEを特徴づけるのは、輪郭のつくり方、素材の見せ方、着想を形にする細部です。REPUBLIQUEやMIKADOでは、厚いフロントに角度や丸みを与える。STRATOSPHEREやBOMBARDIERでは、金属の線を切り替えたり、レンズを傾けたりする。LADY JANEやPHAEDOでは、想像する人物に合わせて全体のバランスを調整しています。
正面の形だけを見ても個性がありますが、横からの厚みや、内側の金属部品まで見ると、デザインの密度が伝わってきます。パリと東京を掲げる発想と、日本の製造技術。その両方を、一本のフレームの具体的な形として楽しめるブランドです。