PORT TANGER(ポート タンジェ)とは?|創設者・ブランド名の由来・日本製フレームの特徴
PORT TANGER(ポート タンジェ)は、2020年に設立されたアイウェアブランドです。顔に沿う曲面フロント、左右に並ぶ6ポイント、日本製の丁寧な仕上げを特徴としています。
ブランド名は、モロッコの港町タンジェを舞台にした詩が由来です。この記事では、現在の中心メンバー、ブランドを支える家族の背景、タンジェという街、フレームに共通する特徴を順番に紹介します。
◎PORT TANGERとは?|設立は2020年
PORT TANGERが正式にスタートしたのは2020年です。ただし、アイウェアの開発はそれ以前から進められていました。
中心人物のBilal Fellah(ビラル・フェラー)は、20代からヴィンテージ眼鏡を収集してきた人物です。2017年に開発を始め、約2年間のリサーチを経てブランドを立ち上げました。したがって、2017年は開発開始、2020年はブランド設立と考えるのが正確です。
Bilalは2021年にFashion Trust ArabiaのAccessories部門を受賞。PORT TANGERも2022年にVision Expo Global Talent Searchを受賞しています。
現在のフレームは日本で作られています。特徴のあるビジュアルだけでなく、眼鏡としての作りまで評価されてきたブランドです。

PORT TANGER Official Campaign. Photography: Bibi Borthwick / Image: PORT TANGER
◎ブランドを動かす3人|役割から整理する
PORT TANGERは複数のクリエイターが関わるブランドです。現在の体制を理解するうえでは、まず次の3人を押さえておけば十分です。
公式AboutではVanessa、Bibi、Bibiの夫を創設者として記載しています。現在の取扱資料では、その夫がBilal Fellahであることが確認できます。
- Bilal Fellah:アイウェアの企画とクリエイティブディレクション
- Bibi Borthwick:写真とブランドビジュアル
- Vanessa Reid:スタイリングとアートディレクション
Bilal Fellah|プロダクトの中心人物
Bilal Fellahは、モロッコとアルジェリアにルーツを持つデザイナーです。生産分野での経験と、ヴィンテージ眼鏡の収集を背景に、PORT TANGERの企画とプロダクトを担当しています。
フレームの見た目だけでなく、前後方向のカーブ、アセテートの厚み、丁番の収まりまで考えている点が特徴です。日本の工場と組み、強い形を実際に掛けられる眼鏡へ仕上げています。
Bibi Borthwick|写真とブランドビジュアルを担当
Bibi Borthwick(ビビ・ボースウィック)は共同創設者の一人で、公式キャンペーンの多くを撮影しています。
14歳から写真を撮り始め、2017年にはDazed 100に選出されました。A$AP Rocky、James Blake、Solange、Thom Browneなどの撮影実績があります。
PORT TANGERのLOOKは、フレームだけを大きく見せる一般的な商品写真とは少し違います。人物、服、光、背景を含めて一つの雰囲気を作っているのが特徴です。

PORT TANGER Official Journal Look. Photography: Dani Bastidas / Image: PORT TANGER
Vanessa Reid|スタイリングとアートディレクションを担当
Vanessa Reid(ヴァネッサ・リード)は、英国とスペインにルーツを持つスタイリストです。POP Magazineのファッションエディター/ファッションディレクターを務め、写真家Viviane Sassenとも長く仕事をしてきました。
2021年に発表した「Kuky」では、母親が掛けていたアビエーターをもとに、輪郭をよりシャープに調整しています。既存の服に眼鏡を合わせるだけではなく、デザインの企画段階から参加するメンバーです。
なお、2020年のローンチ時にはBilalとDaniël Sumarna(ダニエル・スマルナ)がクリエイティブディレクターとして紹介されていました。Daniëlは初期のブランドイメージを作った人物ですが、現在の中心メンバーとは分けて考えると分かりやすいでしょう。
◎Bibi Borthwickの両親|ファッションと写真を仕事にしてきた二人
Bibiの母はファッションデザイナーのMaria Cornejo(マリア・コルネホ)、父は写真家のMark Borthwick(マーク・ボースウィック)です。

Maria Cornejo and Mark Borthwick at their Brooklyn home, 2013. Photography: Mark C. O’Flaherty / Image: Civilian Global
母 Maria Cornejo|Zero + Maria Cornejoのデザイナー
Maria Cornejoはチリ生まれ、英国育ちのデザイナーです。ロンドン、パリ、ミラノ、東京で経験を積み、1998年にニューヨークでZero + Maria Cornejoを設立しました。
Mariaの服は、円や長方形をもとにした幾何学的なカッティングが特徴です。見た目の面白さだけでなく、身体が動きやすく、日常で着られることを重視しています。Tilda Swinton、Christy Turlington Burns、Cindy Sherman、Michelle Obamaなどが顧客として知られています。
2006年にSmithsonian Cooper Hewitt National Design Award、2023年にCFDA Geoffrey Beene Lifetime Achievement Awardを受賞しました。

『Maria Cornejo: Zero 1997–2017+』。Mariaの20年間の仕事をまとめた作品集。Image: CFDA
父 Mark Borthwick|ファッション写真家、詩人、音楽家
Mark Borthwickはロンドン出身の写真家です。1980年代半ばにパリへ移り、i-DやThe Faceなどで活動を始めました。その後、Vogue Italia、Purple、Maison Martin Margiela、Yohji Yamamoto、Hussein Chalayanなどの撮影を手掛けています。
自然光を使い、白く飛んだ部分や偶然の動きも残す写真で知られています。きれいに整えすぎず、被写体との距離が近いのが特徴です。写真に加えて、詩や音楽の制作も続けています。
Mariaの初期コレクションもMarkが数多く撮影しました。2017年に出版された作品集には、Mariaのスケッチ、フィッティング写真、Markが撮った服や人物の写真が収録されています。

左にMaria Cornejoのスケッチ、右に完成した服。『Maria Cornejo: Zero 1997–2017+』より。Photography: Mark Borthwick / Image: CFDA
PORT TANGERの公式Aboutは、ブランドの背景として家族の記憶や個人的な物語を挙げています。Bibiがブランドの写真を担当していることを考えると、両親の仕事は単なるプロフィール情報ではありません。服と写真を一緒に作ってきた家庭環境が、PORT TANGERの制作方法にもつながっています。
◎ブランド名の由来|タンジェを舞台にした詩
PORT TANGERという名前は、タンジェを舞台にした一篇の詩に由来します。
ブランド公式によると、その詩は旅日記の見開きに書かれていました。そこからデザインの構想が始まり、街の名前をブランド名に採用したと説明されています。
「PORT」は港、「TANGER」はモロッコで使われるタンジェの表記です。港町の名前をそのまま掲げることで、ブランドのルーツを明確にしています。
◎タンジェとはどんな街?|モロッコ北部の港町
タンジェ(Tangier/Tanger)は、モロッコ北部のジブラルタル海峡に面した都市です。大西洋と地中海の境目にあり、海峡を挟んだ対岸にはスペインがあります。

タンジェ旧市街メディナ、2010年。Photography: Entropy1963 / Public Domain / Image: Wikimedia Commons
旧市街のメディナには、白や黄土色の建物、細い路地、小さな商店、タイルや木製扉などが残っています。高台にあるカスバからは港と海峡を見渡せます。中心部にはグラン・ソッコやスルタン宮殿があり、スペイン統治時代の建築も見られます。
タンジェは1923年から国際管理地区となり、1956年にモロッコへ復帰しました。長く外国人が行き交ったため、北アフリカの文化にスペインやフランスなどの影響が混ざっています。DelacroixやMatisseをはじめ、多くの画家や作家が滞在した街としても有名です。
PORT TANGERのカラー名にMediterranee、Tobacco、Limonなどが使われているのも、タンジェの海、建物、植物を連想させます。黒いフレームだけでなく、深い青やオリーブ、黄緑などを展開している理由が分かりやすくなります。
◎写真で見る、PORT TANGERに共通する6つの特徴
ここからは、当店DOWNTOWNで販売しているモデルの写真を使い、フレームに共通する特徴を紹介します。
※掲載商品は2026年8月26日時点で在庫を確認済みです。完売している商品は、商品写真・商品リンクともに使用していません。
1|顔に沿う曲面フロント
PORT TANGERの公式は、すべてのフレームに共通する構造として「one-front, curved structure」を挙げています。正面が平らではなく、顔を包むように前後方向のカーブが付けられています。

UNS col.Black-Black|DOWNTOWN取扱商品
UNSは横に長いレンズと厚いフロントを組み合わせたモデルです。正面から見るとシャープですが、上から見るとかなり強くカーブしています。

UNS col.Black-Blackのブリッジ周辺。前後方向のカーブとアセテートの厚みが分かります。
このカーブによって、フレームの外側が顔から離れすぎず、横幅のあるデザインでも掛けたときにまとまりやすくなります。
2|左右に並ぶ6ポイント
フロントの左右には、6つの金属ポイントが並びます。PORT TANGERを見分ける目印です。

UNS col.Black-Blackの6ポイント。
公式の説明では、3つが過去を表す「郷愁・伝統・職人技」、残りの3つが現在を表す「希望・デザイン・文化」です。大きなロゴを使わず、この小さなパーツでブランドを示しています。
3|日本製のアセテートフレーム
現行のPORT TANGERは日本でハンドメイドされています。厚みのあるアセテートに金属パーツを組み込み、丁番や合口を精度よく仕上げています。

UNS col.Black-Blackの内側。丁番とアセテートの仕上げも確認できます。
外側の形は大胆ですが、内側は眼鏡としてきちんと作られています。実物では、エッジの磨きやテンプルを開閉したときの感触にも違いが出ます。
4|昔の形をベースにした太い輪郭
PORT TANGERには、ナロー、スクエア、アビエーター、ペンタゴンなど、ヴィンテージ眼鏡を思わせる形があります。昔の形をそのまま再現するのではなく、リムを太くしたり、外側へ張り出させたりして、輪郭を強調しています。

PORT TANGER Official Still Life / Image: PORT TANGER
Dhatは、アビエーターとペンタゴンの中間のような形です。上辺は直線的で、レンズ下部には角度が付いています。

Dhat col.Black-Black|DOWNTOWN取扱商品
Mariはアビエーターをもとにしたモデルです。ティアドロップ型のレンズに太いリムを合わせ、一般的なメタルアビエーターよりもはっきりした印象に仕上げています。

Mari col.Alkakaw-Tobacco|DOWNTOWN取扱商品
5|タンジェを思わせるカラー
黒に加えて、Tobacco、Warm Olive、Mediterranee、Limon、Alkakawなどの色を展開しています。深い青、オリーブ、ブラウン、黄緑といった色が多く、北アフリカや地中海を意識した構成です。
Hadsは横幅のあるスクエア型で、フロントに強いカーブが付いています。Mediterranee-Blackは深いブルーと黒の組み合わせです。

Hads col.Mediterranee-Black|DOWNTOWN取扱商品

斜めから見ると、フロントのカーブとテンプルの厚みがよく分かります。
Limon-Tobaccoは、透明感のある黄緑とブラウンを組み合わせています。同じHadsでも、Mediterranee-Blackより軽く見えるカラーです。

Hads col.Limon-Tobacco|DOWNTOWN取扱商品

厚いアセテートに光が通ることで、色に濃淡が生まれます。
6|ユニセックスで使える設計
PORT TANGERは、性別でモデルを細かく分けていません。同じフレームでも、顔の大きさ、眉の形、髪型、服装によって見え方が変わります。
公式LOOKでも、さまざまな人物が同じコレクションを着用しています。形の強さはありますが、男性用・女性用というより、掛ける人のスタイルに合わせて選ぶブランドです。
レンズには100% UVA/UVBカットのナイロンレンズを使用しています。
◎PORT TANGERが評価されている理由
PORT TANGERは設立からまだ年数の浅いブランドですが、商品とビジュアルの両方に一貫性があります。
Bilal Fellahがフレームを企画し、Bibi Borthwickが写真を撮り、Vanessa Reidがスタイリングとアートディレクションを担当する。役割が分かれているため、商品写真、LOOK、フレームのデザインが同じ方向を向いています。
そこに日本の製造技術が加わることで、見た目だけで終わらない眼鏡になっています。2021年のFashion Trust Arabia、2022年のVision Expoでの受賞も、こうした総合的な完成度が評価された結果といえるでしょう。
◎まとめ
PORT TANGERは、2020年に設立された日本製のアイウェアブランドです。開発の中心はBilal Fellah、ビジュアルはBibi Borthwick、スタイリングとアートディレクションはVanessa Reidが担当しています。
ブランド名はモロッコの港町タンジェを舞台にした詩に由来します。顔に沿う曲面フロント、6ポイント、太いアセテート、タンジェを意識した色使いが主な特徴です。
当店では、フロントの形だけでなく、斜めや内側から撮影した写真も掲載しています。気になるモデルがあれば、商品ページでカーブや丁番まで確認してみてください。
PORT TANGERの現在のラインナップ
商品一覧を見る◎参考資料
- PORT TANGER公式|About us
- PORT TANGER公式|Journals
- PORT TANGER公式|Visited by Vanessa Reid
- Forbes|New Brand To Know: Port Tanger
- CFDA|Port Tanger Wins Vision Expo Global Talent Search Award
- Fashion Trust Arabia|2021 Winners
- Dazed 100|Bibi Borthwick
- CFDA|Maria Cornejo
- CFDA|Maria Cornejo on 20 Years of Zero and Her New Book
- CFDA|2023 Fashion Awards Winners
- MYKITA|The World of Mark Borthwick
- Civilian Global|Over the Brooklyn Bridge
- Moroccan National Tourist Office|Tangier
- Commune de Tanger|City history
- Wikimedia Commons|Tangier street in old Medina